1.引き継ぎが必要なのは業務が属人化している証拠

 今日は業務の引き継ぎについて考えています。日本の企業では辞める前に引き継ぎを行うことが慣例となっています。例えば辞める1ヶ月前に会社にその意思を伝え、その間に引き継ぎを行うのです。ことこの「引き継ぎ」というものに焦点を当てると、人材の流動性が高い国の企業ほどこの引き継ぎというものが存在しない企業が多いのです。その理由は業務そのものが誰にでもできるように単純化、定量化されており、マニュアルやその業務を遂行するための知識を他の社員にも共有されているためです。そのような会社である場合、仮に担当者が翌日に退職していなくなった場合でも、顧客の情報や業務のノウハウは組織に共有されているため、新入社員がすぐに後任についても業務を進められるわけです(実際はしっくはっくしながらですが)。

2.組織への共有は時間をかけないことが大事

 そのような組織を目指す方法として多くの社員がみんなの業務に精通した方が良いだろうと考え、会議などを通じて逐一共有している場合もありますが、これは良い方法とは言えません。会議そのもので時間を取ることも問題ですし、業務のノウハウの共有はあくまで「保険」の意味合いであることを理解すべきです。したがって誰でも見られるフォルダにマニュアルを保管して置くだけでよいのです。見る見ないは他の社員に任せて、むしろそのマニュアルの完成度について管理者がチェックして置くことが重要です。まず「そのマニュアルだけを見てその業務をこなせるか?」、「内容を1時間で理解でき、すぐに業務に取りかかれるか?」、「マニュアルのアップデートは毎日行われているか?」等のポイントをチェックすると 良いでしょう。あえて他の社員にOJTの時間を作って説明したり、後から来た後任の人に引き継ぎをする必要がないような体制を作り上げることが大切です。

3.定量化も忘れない

 ここで1点注意して頂きたいのは「新人でもこなせる業務量」にいち担当者の業務量をコントロールしておくことが重要です。後任についた人がすぐにこなせるようになるには業務量が多すぎては不可能です。よく社員の生産性を高めるために空いたスケジュールにガチガチに業務を詰めていく方法を見受けますが、これをやってしまうと組織をスムーズに回すことができなくなります。担当について人の習熟度が上がって業務の短時間にこなせるようになった場合は、他の業務を与えるのではなく業務改善に時間を使うよう指示すべきです。その上で仕事がなくなり、結果として次に仕事が受けられるようになったら、次の業務を増やす分には良いと思います。

4.大きい企業になればなるほど、特殊な処理が業務になる

 一般的に大きな企業であればあるほど、日常的な業務は資本装備にお金をかけて普段は自動で行うようにしています。結果、担当者の業務は例外的な定型業務にハマらない特殊なケースの処理に時間を費やすことになります。これが大企業と中小企業との仕事の違いです。そんためマニュアルや引き継ぎの重要性は規模が大きくなるほど増します。しかし多く場合はうまくいきません。なぜでしょうか?それは業務中に起こったミスやトラブルを社員が明文化したがらないために起こります。業務中に起こったミスやトラブルは社員個人の評価に直接繋がりますし、そのようにミスを周囲に開示する生き方は要領が悪い生き方であると考えている人も少なくありません。自分自身で経営者や監査人、内部統制部門などで働いたことがない限り、口頭で指導しても理解に至ることは難しいでしょう。そのような場合は何らかのミスやトラブルを開示することによってインセンティブをもたせる設計が必要でしょう。これが可能になれば、そのマニュアルのフォーマットをシステムの仕様書をベースに作るくらいでかなり効率化が図れるはずです。